第六回 長谷部勇一 氏 × 殿内崇生



長谷部 勇一 氏
略歴:1954年東京都北区生まれ。1973年3月東京都立竹早高校卒業、1978年3月一橋大学経済学部経済学科卒業、1984年3月一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、同年4月横浜国立大学経済学部助教授、1990年3月アメリカ合衆国カリフォルニア州立大学バークレー校客員研究員(1991年7月まで)、1991年12月経済企画庁経済研究所(現内閣府社会経済研究所)客員研究官(1993年3月まで)、1996年4月横浜国立大学経済学部教授、1999年4月大学院国際社会科学研究科教授、2004年4月国立大学法人横浜国立大学経済学部長(2007年3月まで)、2011年4月大学院国際社会科学研究科長(2013年3月まで)、2013年4月横浜国立大学情報基盤センター長(2015年3月まで)、2015年4月横浜国立大学学長、現在に至る。
専門:比較経済システム、経済統計(産業連関論)、環境経済。具体的には、①最適投資政策の理論的、実証的研究。最適成長理論の成果を取り入れて、計画経済における最適投資政策のシミュレーション手法及び分析用プログラムの開発。 ②環境分析のための産業連関分析手法の理論的、実証的研究。産業連関論における要因分析手法を応用し、経済構造と環境負荷との関係の要因分析を行えるよう理論を拡張し、東アジア諸国の環境分析用産業連関表を用いた分析手法の確立。これにより、貿易に伴う環境負荷の移転問題(カーボンリーケージ、バーチャルウォーター)を実装分析 ③国際分業構造(サプライチェーン)を分析するための産業連関分析手法の理論的、実証的研究。④原子力発電所事故、大都市の地震などの災害の経済的影響に関する理論的、実証的研究。東海村と東京都を対象として、それぞれ想定される原発事故と直下型地震の及ぼす経済的影響を推計。
学会活動としては、環太平洋産業連関分析学会(副会長2010-2012、会長2012-2014)、中国投入産出学会顧問(2011年8月~2014年7月)、比較経済体制学会、国際開発学会など。
主な業績:
・久保庭真彰編著『.マイコンによる経済学』青木書店1983年2月(共著)
・植田和弘、寺西俊一、長谷部勇一、鷲田豊明「環境・エネルギー・成長の経済構造分析」『経済分析』第134号、経済企画庁経済研究所,1994年。
・Yuichi Hasebe, Shresta-Nagendora“Economic Integration in East Asia: An International Input-Output Analysis” The World Economy Vol28-12 ,2006.
・長谷部勇一、藤川学、シュレスタ・ナゲンドラ「東アジアにおける経済構造変化とカーボンリーケージ-2005年アジア国際産業連関表の推計をふまえて-」『経済研究』Vol63 No.2、一橋大学経済研究所、2012年。
殿内理事長
本年度の運営テーマとして「創発」としております。「創発」とは個人と個人の力を組み合わせると想像以上の力を発揮できるものであると考えています。その中で個人の力を高めないで組み合わせても大きな力が発揮できないので、個人の成長を進めていく為に今回横浜国立大学と協働し、個人の力を伸ばす人材育成事業を行いたいと考えています。
今回は長谷部学長とお話しさせて頂き、横浜市にある国立大学と青年会議所として意見交換できればと考えています。
また、私は地元が保土ヶ谷区なので幼少の頃からこのキャンパス近辺で遊んでいた想い出の地域なので、横浜国立大学は身近に感じる大学です。そんな経緯もあり今回は、お時間を頂きました。早速ですが、横浜国立大学の特徴を教えて頂けますか。
長谷部 氏
横浜国立大学は「実践性」、「先進性」、「開放性」、「国際性」という4つの理念を重要な柱としています。また本学は、古くから国際化の先頭を走ってきた横浜に位置しており、グローバルとローカルの接点として、地元の行政、団体、企業等と連携して様々な取り組みを行う事がとても重要だと考えていますので、青年会議所の皆様とお話しできることを大変嬉しく思います。
本学の特徴として3つございます。1つ目は、実践性がある研究を軸にして教育に反映させるといった事を行っており、「研究大学として躍進」していこうと考えています。最近では、リスク共生学の研究拠点としての発展を考えています。地方の国立大学の中で大学院が充実しており、博士号を出せる大学として発展してきております。現在、約10,000名いる学生の中で2,500名の大学院生が在籍しているというようにかなり比率が高く、大学院生と共に研究を充実させて学部教育に活かすといった取り組みをしております。2つ目に4つの学部と5つの大学院が一つのキャンパスにあるといった人文科学系、社会科学系、理工学系の交流が盛んである事が大きな特色だと考えています。他大学にはない「文理融合」によって研究や教育に於いて学生にとってもより総合的・効果的な学びとなります。3つ目が「多くの留学生を受け入れ」ており、主にアジア圏を中として現在約900名の留学生を受け入れております。本学は古くから留学生の受入を行っており、1995年からは英語による修士プログラムを世界銀行などと連携し、アジアやアフリカ諸国から毎年10~15名ほどを輩出しることもあり、海外の卒業生ネットワークが強いことも特色です。
殿内理事長
数年前に横浜青年会議所と横浜国立大学の学生で交流をしておりました。今インターンシップといった形で連携している団体や企業はあるのでしょうか。
長谷部 氏
現在、横浜商工会議所と連携し、数名のインターン生を出しており、最近ではその中には留学生も含まれています。今後は留学生をターゲットとしたインターンシッププログラムを考えていきたいと思います。
殿内理事長
私の会社でもインターンの受け入れを行っておりますが、大学からのインターンとしての特徴として企業研究を行い、会社内の様々な事を分析していました。
現在多くの留学生を受け入れておりますが、多くの留学生を受け入れる事になった経緯を教えて下さい。
長谷部 氏
戦後賠償による留学生制度に基づき、昭和の時代より東南アジアからの留学生を積極的に受け入れており、留学生を教える事が出来る熱心な先生が多く在籍していました。また、1990年頃に留学生センターを作り、基本的な日本語の教育や生活のケアを行う事をやっておりました。そういった事を行っていた為、徐々に口コミなどで本学の受け入れ態勢の評判が高まり、現在に至っていると考えます。
殿内理事長
具体的にどういった受け入れ態勢があるのでしょうか。
長谷部 氏
国際交流会館といった寮施設が本学の周りにいくつかあり、留学生は主にそういった施設で日常生活を送っています。
殿内理事長
お話をお聞きしてこれだけ多くの留学生が在籍しているので日常的に国際交流が行えるということは学生にとっては大変良い体験だと思います。リアルに触れる事によって多くの学びが得られるものだと感じました。
次のご質問として横浜国立大学のビジネススクールの特徴と活かし方を教えて下さい。
長谷部 氏
横浜ビジネススクールの一番の特徴は少人数で徹底的に教育するといった形式をとっており、世界で一番小さなビジネススクールだと思います。12名の定員を2つの演習に分け、さらにそれぞれの演習を2名の教員が担当し、2年間みっちり教育するといった形をとっております。教育と生徒でできるだけ近い関係を構築し、議論していくといった事を行っております。修士の学位を取得した後にそのまま博士課程後期に進学し、博士号を取得する生徒もいます。
殿内理事長
横浜ビジネススクールに入学を希望される方はどの様な方々がいらっしゃるのでしょうか。
長谷部 氏
入学資格として、仕事の実務経験3年以上が必要ですが、20代の方から50代の方まで幅広い年齢層の方々が入学を希望されています。業種としては多様性を出すように幅広い業種の方々に来て頂いております。多様性がある人材を受け入れる事によって、教員や学生にとって新たな発見が生まれると感じています。
殿内理事長
留学生を多く受け入れてグローバルな部分がございますが、横浜国立大学としてローカルな部分で取り組まれている事を教えて下さい。
長谷部 氏
本学は10年前に地域実践教育研究センターといったセンターを立ち上げております。このセンターには4学部、5大学院の先生方が入り、地域の問題を捉えて、学生と一緒に勉強しながら地域の問題に取り組んでいくといった地域課題実習のプロジェクトを行っております。各プロジェクトは横浜国立大学の周辺地域として保土ケ谷区をはじめ横浜市内、神奈川県の各地域で行われています。今までのプロジェクトとして地元商店街や横浜市内にある歴史的建造物に対するプロジェクトや事前防災ができるまちづくり等の様々なプロジェクトを行っています。大学の所在地が保土ケ谷区にあるという事で特に保土ケ谷区とは連携を取って区内の経済分析等も行っており、地域に積極的に取り組んでいく事が重要だと考えています。また、横浜は元々グローバルなまちとして発展してきた都市なので、グローバルとローカルを共に考える必要があり、グローバルとローカルを共に捉える視点というものも大事だと考えています。
殿内理事長
現在、社会の中では昔に比べて少子高齢化社会や環境問題等、課題や問題が明確化されていると考えます。横浜市というのは2020年まで人口が増え続けると言われていますが、横浜市は事業所数が人口に対して少ないので法人税が少なく、人口が減っていってしまうと税収が減っていってしまうと考えています。今後はすでにあるものをどれだけリノベーションするのかが大事になってくるのではないかと思いますし、他国でもこういった状況がいずれは出てくると思うので、少子高齢化社会にどういった事ができるかという「横浜モデル」といったものができればと考えています。
長谷部 氏
私として感じているのは、少子高齢化を考える場合、今後は医療や福祉の分野を研究し人材を育てていくといった事が重要になってくるのではないかと思っています。神奈川県では未病対策や予防医学を進めており、本学では医学部はございませんが、未来情報通信医療社会基盤センターといったセンターを設置しており、横浜市立大学や国外ではオウル大学等の多数の研究機教育機関と連携しています。また、研究機関以外でも企業にも協力して頂いております。
殿内理事長
私が考えている「創発」の考えの中で学生やNPO等ともっと協力していきたいと考えています。昔は青年会議所しかない時代だったのが今は色々な団体がある時代だと思います。主体的に行う事も大事だと考えますが、今後は色々な団体等と連携して事業を進めていきたいと考えています。
長谷部 氏
先程ご紹介した地域実践教育研究センターは、多くの学生と共同してプロジェクトを行っていますし、多くの留学生もいますので様々な事に協力できる体制があります。多様性の中でこそ創発は生まれると思いますので是非とも連携して学生の学びになる事を進めていけたらと思います。
殿内理事長
今回人材育成事業という事で事業を行いますが、今後の時代を創っていく若手経営者や学生に対するお考えを教えて下さい。
長谷部 氏
従来は単純な学習といった形式で知識をそのまま吸収するといった事が中心だったかと思いますが、今後はそれだけではダメだと考えています。「知識を創る」、良い意味で既存の価値観や概念を壊していく事がイノベーションだと考えており、これからはそういった事を提案できる人材が必要だと思います。今後の若手経営者や学生にはそういった提案が出来る様な人材になって頂きたいと思いますし、大学としてもそういった人材を育成していきたいと考えています。イノベーションとは単なる技術革新ではなく創発的に破壊し創造する事だと考えていますので、より広い視野が必要です。そのためにも、本学の文理融合のリソースを利用されて、イノベーションの考えを実践できる人材になって頂きたいと考えています。
殿内理事長
この度は、ありがとうございました。ハマのリーダー育成事業が4月9日より3回に渡り、協働して行わせて頂きますが、どうぞ宜しくお願いします。
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対談後記
この度は、横浜国立大学の長谷部学長にお会いさせて頂いた。今回、お聞きした中で特に印象深かったのが、地域の課題について教授が提案し、学生がプロジェクトを行っている活動には大変興味深いものがありました。長谷部教授のお話にもあった文理融合(文系・理系の枠に捉われない)を取られていて、学生の時代に多様性のある考えを学べる機会を創られているのには大変興味深い事でした。4月9日、23日、5月14日と3回に渡り、ハマのリーダー育成塾を開催頂きますが、参加者の方に何かしらの気づきと行動に起こして頂けるそんな機会になればと感じるのと同時に当日が大変楽しみになりました。
殿内崇生






